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2009.06.26 *Fri

PC紹介(1):『フェール』

 交易都市リューンの朝は早い。
 朝も暗いうちから商人たちが市に並べる品物を運び出し、教会では祈りの声と共に一日が始まる。
 宿屋『女神の気まぐれ亭』の親父もその例に違わず、いつもと同じ朝を迎えていた。

 二階で暮らす冒険者たちに朝食を出し、依頼に出かける者を見送る。
 張り紙を片手に詳細を尋ねる冒険者に依頼主からの条件や情報を伝え、受ける物には印をつける。
 そういった朝の喧騒が過ぎ去り、ようやく一息つこうとしたその時である。

 からんからんと軽やかなベルが来客を告げ、ドアから覗く人影を見た親父はおや、と眉を上げた。

 街娘と呼ぶには少々風変わりな身なりの娘が立っていた。

 年の頃はまだ十代の終わりと言ったところだろうか。
 肩にかかる黒髪は差し込む朝日を受けて緑の紋を描き、その間からは女と呼ぶにはまだあどけなさの残る、しかし凛々しさを感じさせる顔立ちが覗く。
 長旅を経たのであろう砂埃をかぶった外套は熱さの為か背中に払いのけられ、腰に一振りの細身の剣が下げられている。

 この辺りでは珍しくない格好ではあるが、なぜか親父はこの娘に既視感を覚えていた。
 特に緑の黒髪と意思の強さをうかがわせる眼差しには何かを思い出させる気がしてならない。
 いくつか最近の記憶をたどってみるが、いずれも娘に関するものは思い当たらない。

 どうせ買出しの時にでもすれ違ったんだろう――そう割り切り、営業に専念する事にした。

「いらっしゃい。ウチに依頼かね? それとも宿をお探しかい?」

「いえ、ここに来れば冒険者になれると聞いたんですけど」

 少し上ずった声で娘はそう告げる。
 ああ、とため息と共に親父の眉間に皺が寄った。

 自由気ままに生き、なおかつ名声を得られる仕事。
 巨万の富を得、常人では達し得ない秘境を旅する者達。
 冒険者という職業にそんな幻想を抱き、冒険者の宿屋のドアを叩く者は少なくない。

 しかし現実はそんなに甘いはずもなく、容赦なく彼らの幻想を消し去る。
 そういったものは大抵一年も続かずに宿を去っていくのが常である。
 それもまだ良い方であり、依頼に出かけたきり二度と戻らない者も決して珍しくない。

 つい先日も二、三ヶ月ばかりで根を上げて去っていったパーティがいたが、皆疲れきった顔でドアをくぐって行ってしまった。

 さて目の前の新人候補と言えば…見た所旅慣れた様子ではあるが、やはり街でよく見かける街娘とさほど変わらない様にも見えた。
 しかしやはりこの娘には見覚えがある気がしてならない。

「とりあえず立ちっぱなしもなんだから座るといい。ああ…」

「フェールです。じゃあ、お言葉に甘えて」

 フェールと名乗った娘はほっとした様子で荷物を置き、カウンター席に腰掛ける。
 しかし座る時に外套を巻き込まない様に払う仕草、剣をぶつけて傷つけない様様とっさに手をかける仕草など、一つ一つの動作を親父は注視していた。

(やはり旅慣れているな。それにあの剣の扱いは一日二日の物ではないだろう。
 久々にまともな奴が来たか…しかしフェールだって?)

 名前を聞いて確信した。
 間違いなく自分はこの娘と何かしら面識があるはずだ。
 しかしいつ、どこでどんな関係だったのかがまったく思い出せない。

(まいったな…こりゃ年だと笑われても仕方ないぞ…)

 しかも不思議な事に、件の娘――フェールの様子を見る限り、どう見ても自分達は初対面にしか思えない。
 隠している様子でもなし、それがさらに親父の混乱に拍車をかけていた。

「あの…?」

 不安げな声に我に返ると、薄緑の双眸がこちらをじっと見つめている。
 思いのほか長い間物思いにふけっていた様である。

「あ、ああ、すまんな。何か注文は?」

「いえ、大丈夫です」

 それより…と真剣な眼差しでこちらを見つめるフェールという娘に改めて向き直り、仕切り直す意味で咳払いを一つ。

「じゃあ聞くが、どうしてまた冒険者なんかになろうと思ったんだ?
 正直言って、こいつは大の男でも一月で音を上げる様なきつい世界だぞ。
 見た所少しは心得がある様だが…」

 それを聞いたフェールという娘は少し黙して何か考えていた様だったが、やがて意を決した様に口を開いた。

「困っている人の役に立てたら、と思って」

 その声は決して大きいものではないが、静かな室内に凛と響いた。

「人助けか。しかしそれなら何も冒険者に限った事はないだろう?」

 そう問いかけられれば『そうですね』、と困った様に笑う。

「まだ小さかった頃、ある冒険者の人に命を助けてもらった事があるんです。
 森に遊びに行った時山から下りてきたオークの群れに襲われて、泣きながら森の中を逃げました。
 その時たった一人で助けに来てくれたのがその人だったんです。
 『俺が守ってやる、だから泣くな』、その言葉に私はとても勇気付けられました。
 そして『私もああやって誰かの支えになれたら』…そう思うようになったんです。
 確かに人を助ける仕事は他にもたくさんあります。
 でも私が体験した様な恐怖や理不尽な力に立ち向かえる仕事と言ったら、冒険者しか思いつきませんでした。
 もちろん親には猛反対されました。
 けれど何度も説得したら最後にはわかってくれて、それから冒険者の心得や剣の使い方を必死で習いました。
 今は自分の身を守る事で精一杯ですけど、いつかはあの人の様になれたらって…」

 我ながら甘いですよね、とはにかむ様に娘は笑った。

(全くだな…助けてもらった人に憧れて、か)

 親父は宿に新人候補がやってくると、大抵この質問を投げかける事にしていた。
 簡単な面接や試験の様なものだが、その答えは大体お決まりのパターンというものがある。
 そしてフェールという娘が語ったのはそのお決まりの一つに数えられる解答であった。

 しかしそれを物語る彼女の瞳は今までにない程真剣な色を宿し、今も不安げに眉をひそめながらもまっすぐな眼差しで親父を見つめていた。

「…よし、お前さんの覚悟はわかった。正式にウチの冒険者として迎えようじゃないか」

「本当ですか!?」

 興奮のあまりガタンと椅子を蹴って立ち上がったフェールに「あ、ああ」と気圧されながらもうなずいてやる。
 よっぽど嬉しかったのだろう、感激で肩を震わせていたかと思うと「ありがとうございます!」と勢いよく頭を下げ――見事に一枚板のカウンターに頭をぶつけた。

「?????!!」

 声にならない悲鳴を上げるフェールを親父が心配そうに覗き込む。

「おいおい…大丈夫か? 今から怪我されてたらたまったもんじゃないぞ」

「?っく……は、はい、大丈夫です!」

 額を押さえて涙目になりつつも、フェールは力強くうなずく。

「そ、そうか…じゃあこれに名前とかお前さんの事を書き込んでもらえるか?
 それでお前さんはこの『女神の気まぐれ亭』の冒険者だ」

 そう言って羽ペンと共にカウンターに置いたのはこの宿屋の歴史とも言える宿帳である。
 「おおー、これが…」と感嘆の声をあげながらもフェールは羽ペンをとり、開かれた真っ白なページに自らの記録を記していく。

「しかし…なんでまたウチに来たんだ?
 自慢じゃないが最近ウチでそれなりの活躍をしてる奴らはいないし…」

 そう、現在『女神の気まぐれ亭』に在籍する冒険者はそれなりにはいるのだが、ごく最近目覚しい活躍をしたパーティはほとんどいないはず。
 名前の欄に"Fer"と書き込んだところでフェールがああ、と思い出した様に声をあげる。

「それは宿なら絶対ここにしておけって私の…あああああ!!」

「な、何だどうした!?」

 フェールの手元を覗き込んでいた所に突然耳元で叫ばれたのだからたまらない。
 耳を押さえて怒鳴る親父の問いなど二の次の様子で、羽ペンを放り出すと自らの背負い袋をひっくり返し始めた。
 やがて皺のよった封筒をつかみ出すと、親父に向けて勢いよく突き出した。

「これ! これを『女神の気まぐれ亭』の親父さんに渡してほしいって…」

「わしにだと? 一体誰からだ?」

 見ればわかるらしいから、と手渡された封筒は宛名も送り先も何も書かれていなかった。
 恐る恐る開封してみると、入っていたのは二つ折りにされた一枚の羊皮紙。
 開いてみると、中には癖のある字でたった一言が記されている。

『俺達の〈雛鳥〉をよろしく頼むぜ、クソ親父』

 そして文の末尾に添えられるように記されていたのはシンボルマーク。
 二羽の燕が片翼を合わせて一対の翼を広げる鳥を象ったそれは、一見一筆書きに見えるがよく見ると一羽一羽の筆跡が微妙に異なっている。

 いずれにせよ、よほど手先の器用な者にしか描けないような精巧なものであった。
 興味を惹かれたフェールが、親父の手元を覗きこんだまさにその時――『女神の気まぐれ亭』に再び叫び声が響き渡った。

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〈後書き〉

CWDリプレイ記念すべき第一話でした。
こ、これはやはり想像以上にキツイ・・でも出来上がった時の達成感に早くも癖になりそう。
私は超が付くほど飽きっぽく面倒くさがりなんですが・・気長に続けていけたらなと思います。

さて一人目はフェールのお話でした。
私もついこの前まで読むのが専門だったのですが、思ったのが「女性リーダーのパーティってまだないなあ」というもの(あくまで自分が読めているリプレイの範囲でですが・・)。
職業的にはあまり性別差がないとされる冒険者、しかし依頼内容や場所によっては男性よりも女性の方が不利な面が確実に多そうではあります。
しかし私は根っからの天邪鬼なので、「いないならやってやろうじゃないの!」という意気込みで彼女は生まれました。

フェールは万能型の軽戦士です。
持ち前の身軽さで敵を翻弄し、ちくちくと刺していきます。
当初は【連捷の蜂】を初めとする闘舞術の使い手にするつもりでした。
しかしフェールの場合格闘寄りというよりはあくまで剣での攻撃がメインのイメージが強かったので、あえて闘舞術メインでは行かない事に。
最終的には二刀流の使い手を目指しています。
しかも長短で一対ではなく、長剣二本で一対のちょっと特殊なもの。
とある小説に影響を受けていますが・・あくまで戦闘方法のみです。

しかし実際のCW中だと二刀流ってあんまりないんですよね・・。
『花散里』か『アレトゥーザ』の訓練所で取得出来るものが有名所でしょうか。
それらプラス、何か似たスキルで対応して行こうと思います。

薄々感づいてた方もいらっしゃったでしょうが、彼女の両親は以前『女神の気まぐれ亭』に所属していた冒険者でした。
しかもそれなりに名前の売れたパーティのメンバーで、おまけにシンボルマーク持ちの凄腕盗賊でした。
シンボルマーク云々はY2つさんのリプレイ「風を纏う者」の盗賊ギルドのくだりを参考にさせていただいています。
コンビで活躍して名を上げた盗賊もアリかなと思い、二人で一組のマークなんてものを考案してみました。
燕は生涯つがいを変えず寄り添う鳥らしいので夫婦感も狙ってみましたが・・実際一筆で描けるんだろうかw
・・・と思い若干加筆しました。
二人で一つってすごくツボです。

性格面でのキーワードは「お人よし」、「献身的」、「猪突猛進」、「楽観的」あたりでしょうか。
一見ちょっと危なっかしく見えますが、パーティメンバーに支えられながらもやがては皆を導いていく――そんなキャラを目指しています。
いかんせんまだキャラがつかみきれていないので、この先彼女がどんな面を見せてくれるのか私も楽しみですw
フェール、PC1なのに一番性格に悩んだキャラでもあります・・周りが濃すぎるのもあるんですが。

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【フェール】 ≪CWDスタンダード版仕様≫
女性/若者/万能型

誠実   猪突猛進  献身的
進取派  好奇心旺盛 楽観的
陽気   謙虚   繊細
お人よし

器用度:10 敏捷度:8 知力:7
筋力:5 生命力:4 精神力:5

平和性+1 社交性+2 勇猛性+1 大胆性+1 正直性+2


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※修正しました。Y2つさんありがとうございました!

器用ですばしっこい、しかも大胆で勇敢に突っ込んでいく性格という軽戦士向けのステータスになってくれました。
器用さ、というのは後々の二刀流取得にも繋がる要因だったり。

次回も頑張って執筆して行きます!



≪著作権情報≫
この小説はgroupAsk様製作"Card Wirth"、Y2つ様製作"Card Wirth DASH"を初め各シナリオを基にぐぇんが製作したリプレイ小説です。
それぞれの著作権は作者様方にあります。
また記事内にて使われたシナリオ名については、そのシナリオの著作権は全てシナリオ製作者様にあります。
同時に記事内にて使用されたスキルやアイテムなどシナリオに関する情報の著作権は全てそのシナリオ製作者様方にあります。
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CATEGORY : CWリプレイ

COMMENT

これからも頑張って下さいね
 今日は、Y2つです。
 
 この場では、はじめまして。

 新しいリプレイブログ開設とのことで、ブログの訪問者情報で期待しておりましたが…第一話、とても面白かったです。

 これからの御活躍を祈りつつ…
 もしよろしければ、我が『Y字の交差路』と相互リンクして下されば幸いです。

 
 あと、フィールの能力値をチェックしたところ、ダッシュのスタンダード仕様で作成したデータがなら、実際に出来るデータとは違いましたので、以下に正確なデータを上げておきます。

器用度:10 敏捷度:8 知力:7
筋力:5 生命力:4 精神力:5

平和性+1 社交性+2 勇猛性+1 大胆性+1 正直性+2

 ダッシュで軽戦士を作りたい場合、勇将型も優秀です。
 勇猛性が高く、女性なら器用度+1。
 10を超える能力値は難しいのですが、勇猛性の高さでその分を補えるようになっています。多少能力値をシフトさせるため、特徴をいじる必要はありますが。

 上記のデータでも十分優秀だと思いますよ。
 

 二刀流スキルですかぁ。
 最近の小説で二刀流描写があったのは、『ソードアート・オンライン1』が記憶に新しいですが。
 私も二刀流スキルは難しいため、まだ公式には出していません。
 レイピアにマン=ゴーシュの二刀流はそれに近しいものを、とは考えているのですが。
 今後、作れるか考えてみます。

 長い文章で失礼致しました。
 今後の活動、頑張って下さいね。
2009/06/26(金) 16:24:01 | URL | Y2つ #TIXpuh1. [Edit
いらっしゃいませ!
>Y2つさん

おおおおY2つさん!
初めまして、わざわざのお越しありがとうございます・・!
何分完全にノリと愛の産物ではありますが、暖かく見守っていただければ幸いです。
リンク、こちらからもぜひお願いします!
そしてデータ修正までわざわざありがとうございます。
後ほど反映させていただきますね。

二刀流イメージは…ぶっちゃけると「アイスウィンドサーガ」というファンタジー小説からです。
ブログ名と私のHNもその小説のキャラから拝借してるので、「あれ?」と何か引っかかる方がいれば同士のはずw

スキル、自作するというのも一つの手なんでしょうが何分そこまで技術が・・。
Y2つさんのスキルはどれも作りこまれていてイメージが掻き立てられます。
二刀流スキルも、もし登場するのであればすごく楽しみにしています・・!

訪問ありがとうございました、リプレイの方も頑張ります!
2009/06/27(土) 11:21:18 | URL | ぐぇん #qQ.Udu0. [Edit

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